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「第 36 回アナログ技術トレンドセミナ」の報告

テーマ: 「センサーとアナログ/デジタル混載半導体技術の動向」

開催日時: 平成 26 年 9 月 30 日(火)14:00-17:00

開催場所: 京都テルサ 西館 3 階 第 2 会議室(京都府民総合交流プラザ内)

  モノの状態変化を自動的に測定し、変化を把握して社会的な課題の解決を図るセンサーネットワーク「ソーシャルデバイス」や、様々なモノに通信機能を持たせ、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行 う「IoT(Internet of Things)」が、今後の技術トレンドとして注目を集めている。
 そのキーデバイスと なる各種センサーには、特に超低消費電力、超小型高性能、メンテフリー機能等が必須であるが、その 有力な達成手法の一つとして、最近、技術進歩の著しいアナログ/デジタル混載半導体技術の活用が期 待されている。

 

 そこで今回は、「センサーとアナログ/デジタル混載半導体技術の動向」をテーマに、この事業・技術 分野の最先端でご活躍の方々を講師として招き、最新の状況、将来動向などをお話し戴いた。 35 名の参加があり、講演後には質問が多く出た。また、セミナー終了後の交流会にも多くの方々が参 加され、講師を囲んで活発な意見交換が行われ、様々な新たな連携が促進された。 以下、講演概要を報告する。

 

1.基調講演   「アナログ RF 回路設計技術の今後の発展」

 松澤  昭氏(東京工業大学 大学院理工学研究科  教授)

analog36kaijou1-matsuzawa_089  アナログ、RF 回路技術の最先端の動向を、低消費電力化、高 SNDR(信号/雑音比)化、広帯域化の観点から述べた。
 具体的な研究成果として、まずミリ波(60GHz)を用いた超高速 データ伝送技術について述べた。 世界初の 64QAM トランシーバ を試作し、28Gbps という最高速伝送速度を達成した。
  次に最先端の ADC の動向について述べた。求められる信号帯域 と SNR によって、様々な ADR が使い分けられているが、微細化 の進展により消費電力は激減している。消費電力が変換周波数に比例する ADC が望まれている。

  そこで 12 ビットのスケーラブル SAR(逐次比較)ADC を試作した。 この ADC は、従来の 1/2 以下の面積、消費電力を達成し、かつ電源電圧を変えることにより変換周波数 を 70~30MHz、消費電力を 4.6~0.8mW に可変できる。 次に最新の PLL 技術について述べた。
 注入同期技術を使い、20GHzのPLL で、-96dBc/Hz@1MHz という低位相雑音を実現した。
 更に今後、完全デジタル PLL 実現の可能性が見えてきた。 最後にプログラマブルアナログ回路技術について述べた。

  微細化、低電圧化により、アナログ回路設計 の難易度が増している。そこでコア回路の種類を出来る限り絞り、レイアウトを含め設計の大半を自動化(プログラム化)する技術を開発している。

 

2.講 演   「低消費電力無線通信技術の動向」

   工藤 康 氏(ラピスセミコンダクタ(株) LSI 商品開発本部 無線通信 LSI 開発ユニット) analog36-2kudou_092
ラピスSは、2008 年 10 月に沖電気から分社しローム G の一員になり、2011 年 10 月に現在の社名に変更した。

 当社の無線用半導 体は、特定小電力無線用、無線 LAN 用、Bluetooth 用、Zigbee 用等、多岐にわたる。通信周波数も、429MHz、920MHz、2.4GHz と、様々な用途に対応できる。 最近、環境計測、農業、EMS、セキュリティ、防災、医療・福祉 等で、センサーネットワークへの応用が広がっている。

 ネットワ ーク技術は、アドホックとルーティングがポイントである。 当社は無線用半導体のみを製造・販売し、ロームで、様々なセンサーと組み合わせ、モジュール化して いる。また当社の無線用半導体では、プロセスの微細化やアーキテクチャーの革新等、様々な低諸費電 力化技術を使い、低消費電力を達成している。

 

3.講 演  「ホールセンサーを用いた磁場検知技術の動向」

  國見 仁久氏(旭化成エレクトロニクス(株)センシング事業部車載センサ応用技術部)

37analogseminar_086  旭化成 E は、2003 年に旭化成Gの一つとして設立された。アナログ・デジタル混載 LSI と磁気センサーが主力商品で、年商 1450億円のニッチトップ企業である。 特にホール素子は、Si、InSb、 InAs、GaAs 等様々な素材での供給が可能で、世界シェアは 70% 以上、生産量は 120Mpcs/M を誇る。
  またホール IC も、化合物ホ ール素子と Si-IC、及び Si モノリシック IC の 2 タイプを製造・販 売しており、その生産量は 40M/M と、世界のトップレベルである。 ホール素子は、位置検知センサー、電流センサー、パルスエンコーダ、電子コンパス等に使われている。
 当社の位置検知センサーは、高速で正確な位置検知が可能という特長があり、レンズのオートフォーカ スに使われている。
  当社の電流センサーは、化合物ホール素子と制御用 IC の組み合わせ、温度特性を改善し、高精度、高速 応答を実現した点が特長である。

 

  パルスエンコーダは、回転物の回転方向や回転数の検知が可能で、車用の各種モータ制御に使われる。 当社のパルスエンコーダは、ホール素子に磁気収束版を装着し、センサー一個で、水平/垂直の両方向成 分を検知できるのが特長である。 また同じ原理を用いて、4個のホール素子を用いて 3 軸の磁場検出を 行う 3 軸電子コンパスを商品化している。携帯電話/タブレット用 3 軸磁気センサーの当社シェアは 70% を超える。 また新技術として、化合物ホール素子薄膜を Si デバイス上に構成した、ワンチップ化ホール IC を開発中である。