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「第十二回材料部品部会勉強会」開催報告

3D IC、電子デバイス産業の技術動向及び

カーエレクトロニクスの将来像について

 

 「第十二回材料部品部会勉強会」を 2016 年 9 月 12 日(月)13:00-16:20   御茶ノ水めっきセンター4F会議室で開催しました。今回の勉強会のテーマは、3D IC、NEDIA 戦略マップ 2015 の紹介を含めた 電子デバイス産業の技術動向及びカーエレクトロニクスの将来像を取り上げました。

東北大学 教授 田中 徹 氏

東北大学 教授 田中 徹 氏

1.「3D-IC/TSV の信頼性評価技術と将来展望」

講師:田中 徹 氏 / 東北大学・大学院 医工学研究科 教授

 TSV(シリコン貫通ビア)技術を用いた 3D-IC(三次元集積回路)が実用化フェーズに入ってきています。すでに CIS(CMOS イメージ センサ)では実用化されており、NAND 型フラッシュメモリ、 DRAM、SoC 等での発表も相次いでいます。

 3D-IC は、More than Moore の方向の重要なアプローチであるが、実現するためには TSV、Si 薄化、マイクロバンプ等のキー技術が必要となります。信頼性からみると通常の 2D-IC と異なる 3D-IC 特有の課題があります。

Cu-TSV 周囲の応力、薄化 Si 中の応力、Cu コンタミネーション等です。

 Icの実用化に向けては、信頼性課題の克服が必要であり、Cu コンタミネーションについては C-t 測定、薄化についてはプレーナ型 MOS キャパシタを有する DRAM セルアレイのリテンション の測定等で短期・長期の信頼性を評価することが重要です。

 3D-IC のアプリケーションは CIS、MEMS が先行していますが、今後、メモリ、Wide I/O、Logic on Logic、Photonic に拡大していくと考えられます。3D-IC の実用化に向けて、東北大学では 300mm ウエハー対応の三次元 LSI 試作ライン「三次元スーパーチップ LSI 製造拠点(GINTI)」を宮城復興 パークに設立し、企業向けのサービスを行っています。

 

NEDIA 戦略マップ委員会委員 松本哲郎 氏

NEDIA 戦略マップ委員会委員 松本哲郎 氏

2.「日本の電子デバイス産業の将来像!!」

~~きづきから始まる戦略作り~

講師:松本哲郎 氏 / NEDIA 戦略マップ委員会委員(Z2A 企画)

 今日の電子デバイス産業の状況は、電子部品は元気ですが、半導体に関する部分はいろいろの理由で苦しいですが、これを変えて いくには戦略的思考が必要です。我々が向かう方向は、社会課題の解決、経済グローバル化への対応、変化する環境への対応、IoT 革命の到来から生じるイノベーショ ンへの対応です。

 NEDIA では、”きづき”に着目し、イノベーションに向けて市場・技術を創造するアプローチを「NEDIA 戦略マップ 2015」で提案しています。ここから具体的に新事業の創生活動のサイクルを 回すべく、新事業創生活動を行っています。

 社会及び電子デバイス取り巻く環境は、現状、日本の半導体産業は退潮傾向、受動部品は高シェ アキープです。社会に ICT が溶け込む状況で世界は持続可能社会を目指している中で、日本は高齢 化、生産性の改善の遅れ等の種々の課題があり、課題先進国といえます。また、M&A の遅れ、中国 の影響も考える必要があります。

 市場環境の変化については、新しい顧客目線に社会目線でも見る必要があり、つながり力、隠れた 機能、自分仕様、おどろき提案に注目すべきです。技術環境は、技術価値から使う価値ということで、 意味理解、無給電、自己成長、百年耐久をキーワードとしています。ビジネス環境は、コトをビジネ スにすることが重要で、多様な価値、顧客とのパートナー、業際の突破がキーとなります。サプライ チェーンは、共働、協創に向かい、顧客視点では、”なぜ”、”わけ”の共有が重要となります。社会的 課題、技術的課題は数多くあり、簡単には進んで行かないでしょう。IoT 革命が到来していますが、 産業の IoT と生活の IoT を分けて考えるべきで、産業の IoT については、Industry 4.0、Industrial Internet、中国製造 2025 で製造業の改革を進める動きがあります。

 戦略マップでは、環境の変化に対して何をすべきかについて 109 の項目の技術展開を行い、技術展開リストにまとめました。その中から、NEDIA として技術開発・新事業創生に向けた具体的に進 めていくべきテーマを、エネルギー革新を実現するパワーデバイス、バッテリー、性能限界を突破 する科学的生産技術・デバイス、革新的小ロット生産システム等選定し、研究会・勉強会で議論を 始めました。

 

㈱セミコンポータル 編集長 津田建二 氏

㈱セミコンポータル 編集長 津田建二 氏

3.「カーエレクトロニクスの将来像!!」

講師:津田建二 氏 / 株式会社セミコンダクタポータル 編集長

News & CHIPS 編集長

 最近のクルマには、カーエレが至る所に使われており、多くの ECU(コンピュータ)で構成されています。ECU はコンピュ ータであり、ハード構成に比べ多くのメリットがあります。

 国内の自動車販売台数は減少傾向にありますが、軽自動車の

み成長しています。しかし、カーエレ市場は堅実に成長しており、1 台あたりの搭載 ECU は増加しクルマはコンピュータ化されてきており、半導体需要は増加して います。 今後、自動運転が進むと半導体需要はさらに期待できます。 国内の交通事故は低減傾向にあり、年齢に関係なく減少しており、ECU の搭載は増えているこ とから、交通事故と ECU は逆相関となっています。

 クルマの価値を「走・曲・止」より上げる方向で進んでいます。まず、スマート化(賢く)があげ られ、物体認識、衝突防止、ドライバー認識等が考えられており、基礎技術としては AI やコンピューティング技術の向上が重要となります。より安全に、より安心なクルマを目指して、賢いフ ロントライト、衝突防止レーダー、レーダーの低コスト化、液晶をバックミラーに採用、ロスな しでの魚眼レンズの補正、ドアミラーのないクルマなどが開発または商品化に向けて取り組まれ ています。

 環境対策(≒燃費改善)についても、積極的に進められており、アイドリングストップ、エンジン の最適制御による省排ガス、CO2 削減、48V 化でのアイドリングストップ+回生ブレーキ+モー ター直接駆動、それに燃料電池車の開発等があります。

 コネクテッド(つながる)カ―の方向は、テレマティクス、クラウド連携、GPS/GNSS、セキュリ ティ確保等が進められています。コネクテッドになるとセキュリティの確保が重要で、ファイア ーフォールを設ける等、クルマのセキュリティを守るための種々の方策が考えられています。

 ユーザーインターフェースについても、音声による指令、ダッシュボードの液晶化等が進めら れています。その他、ナンバープレートの RFID 化でナンバープレートを読み取る、迷走防止、 アルコール・覚せい剤の検出器とカギとの連動、アクセル・ブレーキの踏み間違い防止等が進め られています。交差点事故が交通事故の過半数を占めるため、交差点信号機へのカメラ設置、V2X で事故を防ぐ等が進められています。

 今後の自動運転車への期待は大きいですが、テクノロジーは揃いつつあるものの、法整備、社

会インフラの整備は遅れており、最初の利用は 2030 年くらいと予想されます。